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『Air/まごころを、君に - The End of Evangelion』新世紀エヴァンゲリオン劇場版のストーリーとセリフ書き起こし

新世紀エヴァンゲリオン劇場版『Air/まごころを、君に - The End of Evangelion』タイトル
©カラー/1995-2014 GAINAX

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 L.C.L.の水槽の中に無数の〝入れ物〟の残骸が浮かんでいる。レイは、裸のままその光景を無言で見つめていた。

「レイ」

 虚ろな目をしたレイは、背後から聞こえたゲンドウの声を聞いて、ゆっくりと後ろを振り向く。

「やはりここにいたか」

 足音を立ててレイに近づいたゲンドウは、レイの正面に立って言葉を掛ける。

「約束の時だ。さあ、行こう」


「第2層は完全に制圧。送れ」

 NERVネルフ職員の遺体が散乱する施設廊下で交信する戦自隊員。

『第2発令所とMAGIオリジナルは未だ確保できず。西部下層フロアにて交戦中』

『5thマルボルジェは直ちに熱冷却措置に入れ』

 両手を挙げて降伏する非戦闘員をためらいもなく射殺し、確実に息の根を止めに掛かる戦自隊員。

『エヴァパイロットは発見次第射殺。非戦闘員への無条件発砲も許可する』

『ヤナギハラ隊、B小隊、速やかに下層へ突入』

 ついに、階段の下で座り込んでいたシンジの所にも銃声が響く。

「サード発見、これより排除する」

 シンジは無抵抗のまま三人の戦自隊員に取り囲まれてしまう。

「悪く思うな、坊主」

 そのうちの一人が拳銃をシンジの頭に突きつけて引き金を引こうとした瞬間――。

「うぉっ!」

 突然吹き飛ばされる戦自隊員。その直後、ミサトが銃を乱射しながら特攻を掛ける。マシンガンで応戦しようとする隊員を蹴り飛ばすと、壁に追い詰め喉元に銃口を突きつける。

「悪く思わないでね」

 ミサトの放った銃声を耳にして、シンジは頭を抱えて怯える。血だらけになった戦自隊員は壁に張り付いたまま崩れ落ちる。

「さあ、行くわよ初号機へ」

 駐車場に止めた車の陰で、ミサトは戦自隊員から奪った無線機をチューニングする。

『紫の方は確保しました。ベークライトの注入も問題有りません』

『赤い奴はすでに射出された模様。目下移送ルートを調査中』

 ミサトは無線から流れてくる音声に耳を澄ませる。

「まずいわね。奴ら初号機とシンジ君の物理的な接触を断とうとしているわ」

『ファーストは未だ発見できず』

「こいつはうかうか出来ないわね。急ぐわよ、シンジ君」

 ミサトがシンジの方に振り向くと、シンジは背中を向けてうずくまっていた。

「ここから逃げるのか、エヴァの所に行くのかどっちかにしなさい。このままだと何もせずただ死ぬだけよ!」

 ミサトは遠くで小さくなっているシンジに声を上げる。

「助けてアスカ、助けてよ」

 シンジはミサトの声に耳を貸そうとしない。

「こんな時だけ女の子にすがって、逃げて、ごまかして、中途半端が一番悪いわよ!」

 ミサトは立ち上がって、なんとかシンジを動かそうとする。

「さあ! 立って! 立ちなさいっ!」

 シンジの手を引っ張り無理やり立たせようとするミサト。しかし、シンジは力無くうなだれるだけだった。

「もうやだ、死にたい、何もしたくない」

 シンジは完全に現実逃避し、下を向いたまま動こうとしない。

「なに甘ったれたこと言ってんのよ! アンタまだ生きてるんでしょ! だったらしっかり生きて、それから死になさい!」

 ミサトはシンジの耳元に言葉を掛け続ける。


 第2発令所では、未だ銃撃戦が繰り広げられていた。生き残ったNERVネルフ職員が物陰に隠れて、なんとか応戦している。

「構わん、ここよりもターミナルドグマの分断を優先させろ!」

 冬月が緊急用の電話で指示を出す。

「あちこち爆破されているのに、やっぱりここには手を出さないか」

 マコトはコンソールに身を隠しながら、果敢に戦っていた。

「一気に片をつけたいところだろうが、下にはMAGIのオリジナルがあるからな」

 シゲルはサブマシンガンに新しいマガジンを充填して身構える。

「出来るだけ無傷で手に入れておきたいんだろ」

 反撃の隙を狙いながらマコトが言う。

「ただ、対BC兵器装備は少ない。使用されたらやばいよ」

 シゲルが肩をすくめる。

N2エヌ・ツー兵器もな」

 会話をする二人の影で、ただ身を縮めることしかできないマヤ。

 その時、第3新東京市の上空に光の玉が放たれる。物凄い速度で落下したそれは、地上に着弾すると凄まじい威力の爆発を起こす。敵はマコトが懸念していた通りN2エヌ・ツー兵器を使用した。その爆発は、特殊装甲板を溶かすと、ジオフロントの天井を崩壊させるまでに至る。

「ちっ、言わんこっちゃない」

 シゲルは激しい揺れに耐えて頭を抱えながら身を守ろうとする。

「奴ら加減ってものを知らないのか!」とマコトが叫ぶ。

「ふっ、無茶をしおる」

 冬月は受話器を耳から離して吐き捨てるように言う。

 更に追い討ちを掛けるように、ぽっかりと穴の開いたジオフロントに弾道弾の雨が降り注ぐ。

「ねぇ! どうしてそんなにエヴァが欲しいの?」

 マヤは絶叫しながら、コンソールの下で激しい揺れに怯える。

 ミサトは、シンジを乗せて車で目的地へと向かっていた。

「サードインパクトを起こすつもりなのよ。使徒ではなくエヴァシリーズを使ってね」

「15年前のセカンドインパクトは人間に仕組まれたものだったわ。けどそれは、他の使徒が覚醒する前にアダムを卵にまで還元することによって、被害を最小限に食い止めるためだったの」

 ミサトの車は、無数の零号機の残骸の見える通路を突き進んで行く。

「シンジ君……私たち人間はね、アダムと同じ、リリスと呼ばれる生命体の源から生まれた、18番目の使徒なのよ。他の使徒たちは別の可能性だったの。人の形を捨てた人類の…ただ、お互いを拒絶するしかなかった悲しい存在だったけどね。同じ人間同士も」

 助手席でうなだれるシンジに、ミサトは声を強めて目的を伝える。

「いい? シンジ君。エヴァシリーズを全て消滅させるのよ。生き残る手段はそれしかないわ」


「電話が通じなくなったな」

 長野県 第2新東京市

 首相官邸 第3執務室

「はい。3分前に弾道弾の爆発を確認しております」と女性秘書が告げる。

「ネルフが裏で進行させていた人類補完計画。人間全てを消し去るサードインパクトの誘発が目的だったとは。とんでもない話だ」と首相が言う。

「自らを憎むことの出来る生物は、人間ぐらいのものでしょう」と女性秘書は言う。

「さて、残りはネルフ本部施設の後始末か」と首相が言う。

「ドイツか中国に再開発を委託されますか?」と女性秘書が聞く。

「買いたたかれるのがオチだ。20年は封地だな。旧東京と同じくね」と首相が言う。


 完全に天井を失ったジオフロントは、激しい爆撃によって沈黙していた。そこに戦自隊員の無線が行き交う。

『表層部の熱は退きました。高圧蒸気も問題ありません』

『全部隊の初期配置完了』

 山腹から望遠鏡で戦況を確認する戦自隊司令官に現状の報告が入る。

「現在、ドグマ第3層と紫の奴は制圧下にあります」

「赤い奴は?」

「地底湖の水深70にて発見、専属パイロットの生死は、不明です」


 地底湖の湖底に沈んだ弐号機。その中で膝を抱えて眠っていたアスカが目を覚ます。

「生きてる……」

 戦自隊は、弐号機の沈む湖に向かって爆雷の投下を開始する。次々と投下される爆雷は水中に沈み、弐号機周辺で爆発する。激しく揺れる機体の中で苦しむアスカ。弐号機の機体に接触し、至近距離で爆発する爆雷。

「死ぬのはイヤ……死ぬのはイヤ……死ぬのはイヤ……死ぬのはイヤ……死ぬのはイヤ……死ぬのはイヤ……」

 アスカは頭を抱えて怯える。

『まだ、生きていなさい』

 どこからともなく声が聞こえてくる。

「死ぬのはイヤ……死ぬのはイヤ……死ぬのはイヤ……死ぬのはイヤ……」

『まだ、死んではだめよ』

「死ぬのはイヤ……死ぬのはイヤ……死ぬのはイヤ……」

『まだ、死なせないわ』

「死ぬのはイヤ……死ぬのはイヤ……」

『殺さないわ』

「死ぬのはイヤ……」

『生きていなさい』

「死ぬのは、イヤァァァーーー!」

 フラッシュバックする記憶の中で、アスカは母の温もりを探し当てることができた。

「ママ……ここに居たのね」

 眩い光に包まれた母の記憶。幼いアスカは光の方へ手を差し伸べる。

「ママ!」

 現実のアスカが歓喜の声を上げた瞬間、弐号機が四つの眼を光らせて起動する。十字架状の爆発が地底湖に浮かぶ護衛艦を貫く。

「こっ、これは?」

 その光景を見た戦自隊員が驚く。

「やったか?」

 湖面から姿を現した弐号機は、うめき声を上げて護衛艦を持ち上げる。すぐさま弐号機に向かって湖岸からミサイルが放たれる。しかし、護衛艦を盾にして攻撃を防ぐ弐号機。

「どぉりゃぁぁぁ!」

 アスカが力一杯奏縦貫を操ると、弐号機は護衛艦の巨体を戦自隊の地上部隊に向かって放り投げる。道路ごと押しつぶした護衛艦は、自らの重さに耐えかねて崩れそうになると、そのまま大爆発を起こして地上部隊を壊滅させる。

「ママ……ママ…………解ったわ!」

 アスカは晴れやかな表情を見せると、弐号機の機体を空高く舞い上がらせる。

「A・T・フィールドの意味!」

 かつての素早い動きを取り戻して、次々と攻撃をかわしていく弐号機。

「私を守ってくれてる! 私を見てくれてる!」

 戦自隊の施設を踏み潰し破壊した弐号機は、巨大なミサイルを直撃でくらうが、無傷で立ち上がる。

「ずっと、ずっと、一緒だったのね! ママ!」

 ミサトは戦場の跡を踏み越えて車を走らせる。

『エヴァ弐号機起動。アスカは無事です! 生きてます!』

 マヤがミサトに連絡を入れる。

「アスカが!」

 助手席で膝を抱えてうずくまっていたシンジは、アスカという言葉を耳にして体をぴくりと反応させる。

 戦自隊の激しい攻撃を一切受け付けない弐号機に脅威を覚える戦自隊司令員。

「ケーブルだ! 奴の電源ケーブル、そこに集中すればいい!」

 銃撃によりアンビリカルケーブルが切断され、活動限界のカウントダウンが始まる。

「ちっ! アンビリカルケーブルが無くったって! こちとらには1万2千枚の特殊装甲と!」

 銃弾を正面から受けても歩き続ける弐号機。

「A・T・フィールドがあるんだからぁっ!」

 そう言って腕を大きく振るった弐号機の前にA・T・フィールドが展開されると、視界にあった戦自隊の攻撃機が一瞬で消滅する。

「負けてらんないのよ! あんた達にぃ!」

 アスカは、戦自隊の攻撃機を鷲掴みにすると、それを振り回して次々と敵機を破壊していく。抵抗を続ける攻撃機を蹴り飛ばし一体残らず破壊する弐号機。


 ゼーレのモノリスの面前で、キールは次の手段を行使することを宣言する。

「忌むべき存在のエヴァ、またも我らの妨げとなるか……やはり毒は、同じ毒を以て征すべきだな」


 上空に現れた巨大な輸送機の編隊。機体に固定された白いボディーのエヴァ量産機が頭部を固定位置から引き抜くと、「KAWORU」と刻印された赤いダミープラグが挿入される。量産機は、プラグの装填が完了すると輸送機から切り離され、武器を手にしながらゆっくりと落下を開始してゆく。その数9体。量産機は、ジオフロント上空で大きな羽を広げると、鶴のような形態になり旋回して地上に近づいて行く。

「エヴァシリーズ……完成していたの?」

 アスカは空を見上げて、弐号機の頭上に弧を描くように飛行するエヴァ量産機を目撃する。

 冬月が第2発令所で主モニターを食い入るように見る。

S2エス・ツー機関搭載型を9体全機投入とは。大げさすぎるな。まさか、ここで起こすつもりか?」

 量産機が次々とジオフロント内に着陸する。量産機は、地上に降り立つと鳥のような羽をはばたかせて背中にしまい込む。

 目的の場所に辿りついたミサトは、携帯電話越しにアスカへメッセージを送る。

「いい? アスカ。エヴァシリーズは、必ず殲滅するのよ。シンジ君もすぐに上げるわ。頑張って」

 その事を伝えると、ミサトは携帯電話を掛けなおしてマコトにつなぐ。

「で、初号機へは非常用のルート20で行けるのね?」

「はい。電源は三重に確保してあります。3分以内に乗り込めば、第7ケージへ直行できます」

 電話を切ったミサトは、シンジに歩み寄り、座り込んで動こうとしないシンジの腕を取って力ずくで引きずって行く。

 NERVネルフ本部の建物を背にして、量産機に囲まれる弐号機。

「必ず殲滅……ね。ミサトも病み上がりに軽く言ってくれちゃって」

 アスカは相手との間合いを伺って、攻撃のタイミングを図る。

「残り3分半で9つ。一匹に付き20秒しか無いじゃない」

 そう言って姿勢を低くすると、アスカは一気に間合いを詰める。

「うぉぉーりゃぁぁーっ!」

 弐号機は、正面に立っていた量産機の顔に飛びつくと、そのまま顔面を破壊して飛び越える。更に、顔から鮮血を噴出して倒れこんだ量産機を、肩で担ぎ上げると、両腕で持ち上げて真っ二つにへし折ってしまう。真っ赤な液体を全身に浴びた弐号機。アスカは、その中で余裕の笑みを浮かべる。

「エーステ!」

 ミサトは、うなだれたままのシンジの手を取って通路を歩いていく。そして、〝R-1020〟と書かれたゲートの入り口に立って「ここね」と言う。

 そこに銃声が鳴り響き、銃弾が至近距離を掠める。ミサトは、シンジを庇いながら急いでゲートに駆け込むが、逃げる途中で脇腹を撃たれてしまう。ゲートの扉が閉まった直後にバズーカー砲が着弾。辺りは爆煙に包まれる。

「逃がしたか」

 戦自隊員が煙の晴れたゲートを見る。現場にいた三人の戦自隊員は、無線で指示を仰ぐ。

「目標は射殺できず。追跡の是非を問う」

『追跡不要。そこは爆破予定である。至急戻れ』

 戦自隊員たちは、「了解」と言って無線の指示に従う。

 ミサトは、銃弾を浴びた脇腹を押さえながら柱にもたれかかる。

「これで……時間、稼げるわね」

 ミサトは苦しそうに肩で息をする。

「大丈夫。大したこと……ないわ」

 壁を使ってなんとか立ち上がったミサトは、倒れそうになりながらエレベーターのスイッチを押す。

「電源は生きてる。行けるわね」

 ミサトは、エレベーターの入り口に掛かったフェンスに手を付いて、自分の両腕の間に立ったシンジの目を見つめる。

「いい? シンジ君。ここから先はもうあなた一人よ。全て一人で決めなさい。誰の助けもなく」

 フェンスとミサトに挟まれるようにして逃げ場を失ったシンジは、ミサトの目を見れずに顔を下に向ける。

「僕は……だめだ。だめなんですよ。人を傷つけてまで、殺してまでエヴァに乗るなんて、そんな資格ないんだ。僕は、エヴァに乗るしかないと思ってた。でもそんなのごまかしだ。何も分かってない僕には、エヴァに乗る価値もない。僕には人の為に出来ることなんて何もないんだ!」

 シンジは、今までの出来事を思い出して呼吸を荒くする。

「アスカに酷いことしたんだ。カヲル君も殺してしまったんだ。優しさなんかかけらもない、ずるくて臆病なだけだ。僕には人を傷つけることしかできないんだ。だったら何もしない方がいい!」

 シンジは、力なく下ろした手でフェンスをぎゅっと握る。

「同情なんかしないわよ。自分が傷つくのがいやだったら何もせずに死になさい」

 ミサトは、肩を震わせるシンジに向かって言葉を強くする。

「今泣いたってどうにもならないわ!」

 シンジは何も言わずに下を向く。

「自分が嫌いなのね。だから人も傷つける。自分が傷つくより人を傷つけた方が心が痛いことを知ってるから……でも、どんな思いが待っていてもそれはあなたが自分一人で決めたことだわ。価値のあることなのよシンジ君。あなた自身のことなのよ。ごまかさずに、自分の出来ることを考え、償いは自分でやりなさい」

「ミサトさんだって……他人のくせに! 何も分かってないくせに!」

 涙を流して叫ぶシンジの言葉を聞いて、ミサトはシンジの胸ぐらに掴みかかる。

「他人だからどうだってのよ! あんたこのまま辞めるつもり!? 今、ここで何もしなかったら、あたし許さないからね! 一生あんたを許さないからね!」

 ミサトは、血で染まった手でシンジの顔を掴む。両手でシンジの頬を挟み、自分に目を向けさせる。

「今の自分が絶対じゃないわ。後で間違いに気づき、後悔する。あたしはその繰り返しだった。ぬか喜びと、自己嫌悪を重ねるだけ。でも、その度に前に進めた気がする」

 ミサトが泣きながらシンジの目を見つめる。

「いい、シンジ君。もう一度エヴァに乗ってケリをつけなさい。エヴァに乗っていた自分に、なんのためにここにきたのか、なんのためにここにいるのか、今の自分の答えを見つけなさい」

 ミサトはシンジの顔から手を離して、声を落とす。

「そして……ケリをつけたら、必ず戻ってくるのよ」

 そう言って、ミサトは首から下げたペンダントをはずし、シンジに手渡す。

「約束よ……」

 シンジは無言で唾を飲み込む。

「行ってらっしゃい」

 ミサトはゆっくりとシンジに近づくと、長いキスをする。

「大人のキスよ。帰ってきたら続きをしましょう」

 その時、エレベーターのシャッターが開き、シンジは寄りかかっていた体重に足を取られて倒れ込むように中へ入っていく。シンジが何も言うことができないまま、エレベーターのドアは閉まり、そのまま階を進めて行く。

 シンジを送り出したミサトは、力尽き床へと倒れこむ。

「はぁ……こんなことなら、アスカの言うとおり……カーペット、換えときゃよかった。ねぇ……ペンペン」

 ミサトの血が、みるみるうちに床に広がってゆく。

「加持くん……。あたし、これで良かったわよね」

 ミサトの倒れている傍らにレイが立っている。次の瞬間、爆発が起こり、その場は炎に包まれてしまう。

 シンジは、エレベーターの中で泣きながら顔を拭う。口元を拭ったときに付いたミサトの血を見て涙を流す。シンジは、まるで苦痛に耐えるような泣き声を上げて身を縮める。

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