第三芦ノ湖の上空をヘリコプターが飛行する。機内では、それぞれの計画についてゲンドウと冬月が確認事項を交わしていた。〝あの男〟については『マルドゥック機関』と同じく、好きにさせておけとゲンドウは言った。
その頃、京都には16年前の真相を探る〝あの男〟の姿があった。とある廃屋で情報屋と接触する加持は、マルドゥック機関の情報を追っているところだった。マルドゥック機関は、エヴァンゲリオン操縦者選出のために設けられた人類補完委員会直属の諮問機関で、関連するほとんどの企業はダミーだった。加持は、企業の取締役の名前にはゲンドウや冬月の名前があるところまで突き止めていた。
シンジはレイの存在が気になっていた。教室で掃除をしているときも、エヴァ搭乗のテストが終わった後も。エレベーターで一緒になったときに、ふとゲンドウのことについて尋ねる。シンジは、翌日ゲンドウに会うことになっているのだと言った。レイは素っ気無い態度を取った。シンジは掃除の時に見た雑巾絞りをするレイの手に、お母さんの面影を感じたことを話し始めた。レイは、「お母さん」という言葉に反応してたじろぐ。
友人の結婚式に出席したミサトは、遅れてきた加持の世話を焼く。その姿を見たリツコに、夫婦みたいだとからかわれてしまう。
複雑な心境のままゲンドウと会うことになったシンジは、母・ユイの墓前に花を手向けてひざまずいていた。そこに母が眠っていることを実感できない、とシンジはゲンドウに打ち明ける。人は思い出を忘れる事で生きていける。しかし、決して忘れてはならない事もある。シンジの背中にそう語り始めるゲンドウ。ユイが教えてくれた、そのかけがえのないものを確認するためにここへ来るのだと伝える。シンジは思い出の物はないのかと尋ねる。全て捨ててしまった、とゲンドウは答える。全ては心の中にある。今はそれでいいのだと言った。
ゲンドウは用件が終わると、躊躇なく帰路へ足を向けた。そんなゲンドウに向かって、シンジは「話せて嬉しかった」とだけ伝えた。
Those women longed for the touch of others’ lips, and thus invited their kisses.
帰宅したシンジはチェロを弾いていた。そこに、ヒカリの頼みで〝デート〟に出かけたはずのアスカが帰ってきて拍手を送る。どうして始めたのか、何で今でも弾いているのか、自分の意思を示さないシンジに、アスカは呆れ返る。
久しぶりに三人で過ごすことになったミサトたちはバーで飲んでいた。昔話に花を咲かせる加持に、今回の〝仕事〟はあまり深追いしないほうがいいとリツコが釘を刺す。結局酔いつぶれてしまったミサトは、加持に送られる道中の中で、胸の内に秘めた想いを打ち明ける。父の呪縛から逃れられない自分を責めるミサトを見て、加持はキスで感情を受け止める。
部屋で退屈を持て余すアスカは、シンジに「キスしよっか」と持ちかける。驚くシンジに対して、怖いのかと煽り立てる。対抗意識で立ち上がったシンジに歩み寄ると、鼻息がこそばゆいからという理由で鼻を塞いでキスをした。息を止められたシンジは、苦しさのあまり離れて息継ぎをした。アスカは洗面所に駆け込むと、「やっぱ暇つぶしにやるもんじゃないわ」と言って、わざとらしくうがいの音を立てた。
その時、玄関に誰かが入ってきた音がする。酔いつぶれたミサトを家まで送り届けにきた加持の登場に、アスカがはしゃいでみせる。しかし、加持はアスカのことを子ども扱いして相手にしない。アスカは、加持のスーツに付いたミサトの香水の香りに気づいて、その場に立ち尽くした。
NERV本部、大深度地下施設中央部「セントラルドグマ」では、L.C.L.に浸かったレイを眺めるゲンドウの姿があった。ダミープラグの準備は着々と進んでいた。
更に地下2008メートル。ターミナルドグマに侵入した加持は、昨日とは打って変わって、ミサトの向ける銃口に両手を挙げていた。ミサトは、特務機関NERV特殊監査部であると同時に、日本政府内務省調査部にも所属している加持の素性を洗い出していた。隠し事をしていた事実を認めて謝った加持は、ゲンドウやリツコの隠し事について暴露する。
加持のかざしたIDカードでターミナルドグマの扉が開かれる。
胸に〝ロンギヌスの槍〟突き立てたそれを指して「アダム」だと加持が説明する。
「ネルフは私が考えているほど甘くないわね」そう言ってミサトは自分の置かれた状況を悟った。