雨――。
第4の使徒との戦闘の後、ミサトは学校を休み続けているシンジを説得しようと試みていた。いつまでも返事のない部屋に耐えかねて扉を開けると、そこにシンジの姿はなかった。机の上に置かれた身分証と手紙が目に留まる。
「家出か……」
あのような体験をした後では無理もないと、シンジの気持ちを悟るミサト。そこに思わぬ訪問者が現れる。いつまでも学校を休んでいるシンジを心配して、トウジとケンスケが様子を見にきたのだった。ミサトは「シンジ君は今、ネルフの訓練施設にいる」と、状況をごまかした。
電車に乗ってミサトの元を離れるシンジ。徐々に乗客が減っていく車内で、繰り返し音楽を聞き流すうちに、第3新東京市の玄関口「桃源台」に行き着いた。「帰らなきゃ」とは思うものの、どこに行く当てもなく街を彷徨う他なかった。
シンジは、野宿で夜を明かした後、バスを乗り継いで人里から距離を置こうとする。
シンジのことをリツコに問われたミサトは、「もう戻らないかもしれない。戻らないならその方がいいかも」と言って、シンジにきつく当たったことを振り返る。
ミサトは「シンジにとってエヴァに乗ることが苦痛でしかないのなら、もう乗らない方がいい」という。しかし、パイロットは必要だという現実をリツコが突き返す。
Hedgehog’s Dilemma
宛もなく山道を歩いていたシンジは、偶然そこに居合わせたケンスケと出会う。シンジは、山でキャンプを張っていた彼の元で食事を共にし、一夜を過ごすことにした。しかし、まだ朝霧も覚めない中、NERV保安諜報部によってテントを囲まれ、本部へ連れ戻されてしまう。再度エヴァに乗ることについてミサトに問われたシンジは、自分の意思を示さないままNERVを離れることになる。
駅に連れて来られたシンジの元に、トウジとケンスケが見送りに現れる。トウジは、別れを告げるとともに殴ってしまった借りを返すために、シンジに殴ってくれと頼む。シンジはトウジを殴り返すことで、自分の気持ちに気づき始める。
電車の発車ベルが鳴ると、その行く末を見守るトウジとケンスケの前にミサトの車が到着する。走り去る電車を見送って半ばあきらめたミサトの前に、駅のホームに佇むシンジの姿があった。
「……ただいま」
シンジは、長い時間を掛けて自分の帰る場所を見つけたのだった。