すっかり家事を担当するポジションに収まってしまったシンジは、いつものように夕食の支度を進めていた。風呂の温度が熱すぎると言って怒るアスカに、条件反射的にシンジが誤る。内罰的過ぎる彼の態度に業を煮やすアスカを、ミサトが宥める。アスカは、近頃シンジに対して甘いミサトの態度を見て、加持とヨリを戻したからだとこじつけようとする。そこにミサトを食事に誘う加持からの電話が入り、ミサトは気まずそうな顔をした。
エヴァパイロットたちは、ハーモニクステストを同時に行っていた。シンジが最高値を記録したことについて、アスカは納得できない様子だった。シンジは、少し自分に自信を持ち始める。
突如空中に現れた巨大な球体状の飛行物体。パターンオレンジを確認。A・T・フィールドの反応はまだ無かった。未だ使徒と確認できず、MAGIシステムは判断を保留する。
最低限の情報で慎重に観測するエヴァ三機に乗ったパイロットたち。「成績優秀」のシンジに向かって、アスカが先頭を担うように挑発する。シンジは、先ほどの実験で自信が付いていた勢いで、それを受けて立つことにする。零号機と弐号機はバックアップに回って、目標との間合いを詰めて行く。
先手を打って足止めを試みたシンジは、目標に向かってハンドガンを発砲する。三発の弾道が命中する直前、目標は姿を消し、弾丸は空を切った。その瞬間、発令所は〝パターン青〟を検知。初号機の直下に第12使徒レリエルの存在を確認する。
次の瞬間、初号機の足元を黒い陰が支配する。動揺したシンジは、影に向かってハンドガンを連射するが、まるで効果がない。シンジが影の在り処を追って空に目を向けると、その先の上空に、球体状の飛行物体が迫っているのが見えた。しかし、初号機は足元の影に飲み込まれるようにして、焦るシンジの声もろとも地中へと吸い込まれて行く。
弐号機が初号機救出のために影の側まで駆け寄っていく。零号機はスナイパーライフルで飛行物体を狙撃する。しかし、またしても姿を消して見失ってしまった。その直後、弐号機の足元に、初号機を襲ったときと同じ影が出現する。危険を察知したアスカは、縦に高く飛び上がって弐号機を近くのビルにしがみつかせる。しかし、影は周囲のビルごと飲み込んでいってしまう。相手の手の内が見えない以上、ミサトは已む無く二人に退却を命ずる。
生命維持モードに切り替えた初号機の中で、シンジは救出を待つしかなかった。時間の猶予は持って4~5時間だが、すでに12時間が経過していた。使徒を解析した結果をミサトたちに伝えるリツコ。使徒の本体は影の方であり、飛行物体の方が影なのだと説明する。
長時間エントリープラグ内に閉じ込められているシンジは、L.C.L.が濁っていることに気づく。そこに漂う生臭さに気づき、血の臭いを感じ取ってパニックに陥る。この状況を打開するために、リツコは強行手段に出る。シンジの命よりも初号機の回収に重点を置いたその内容にミサトは激怒し、今まで抱えていた疑惑を爆発させる。しかし、リツコは「私を信じて」とだけ言って指揮権を持って去って行った。
Splitting of the Breast
シンジは自分の中に持っているもう一人の自分と対峙する。もう一人のシンジは、シンジが恐れているのは、他人の心の中に作られるもう一つの自分なのだと言う。つまり、他人に嫌われることが怖い、自分が傷つくことが怖いのだと言う。いつも自分のせいにする。自分を騙して生きている。そうやって今まで逃げてきたんだとシンジを追い詰めてゆく心の声。それでも、楽しいこと見つけたんだと言って反論するシンジ。
――楽しいこと見つけて、そればっかりやってて……何が悪いんだよ!
初号機の活動限界が近づいていた。シンジは何もかも諦めかけて目をつむった。その時、母の面影に包まれる感覚を抱いたシンジは思い出を見ていた。
準備が整い、零号機と弐号機が作戦開始位置に着くと、航空機からの爆雷投下段階に入った。すると突然、地面に衝撃が走り、使徒の影に亀裂が発生する。そして、〝影〟であったはずの空中物体を突き破って初号機が現れる。その光景に驚愕するリツコとミサト。アスカは自分が乗っているモノの恐ろしさに震える。ミサトはNERVがエヴァを使って何をしようとしているのか推測を試みる。
無事回収された初号機を見るゲンドウを前に、今日ほどこのエヴァが恐いと思ったことはないと回想するリツコ。ミサトが何か気づき始めている件に関しては、今はいいとだけ答えるゲンドウ。レイやシンジがエヴァの秘密を知ったら許してはくれないだろうと言うリツコ。
シンジは病院で目を覚ました。それを見届けたレイは、後は自分たちに任せて寝ているように伝えると、部屋を後にする。レイが病室のドアを開けると、とっさに身を隠すアスカの姿が目に入り、それに気づいたシンジは思わず笑いをこぼしてしまう。シンジは、自分の体の臭いを嗅いで再びベッドに寝転ぶ。
「取れないや。血の臭い」