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『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 / EVANGELION: 2.0 YOU CAN (NOT) ADVANCE.』のストーリーとセリフ書き起こし

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』タイトル
©カラー/khara

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 その夜。静けさを取り戻した第3新東京市。アスカはミサトの家に戻ったアスカは、布団に包まって眠れない時間を過ごしていた。アスカは何度か寝返りを打ったあと、月明かりに照らされる窓を見つめる。

「ずっと、一人が当たり前なのに……孤独って気にならないはずなのに」

 アスカはシンジの部屋の扉をゆっくりと開けると、静かにシンジの部屋に入り込んだ。シンジは寝息を立てて眠りについていた。アスカは、おもむろにシンジに背中を向けて布団の上に寝転ぶ。

「……!? ち、ちょ……」

 物音に気づいて目を覚ましたシンジは、異変に気づいて振り返ろうとする。

「こっち向かないで」

 アスカはシンジの動きを声で封じる。

「あ……う……ん」

 どうしていいか分からずに、体を固めるシンジ。

「七光り……ちょっとだけ居させて」

 アスカは息を吐くように小さな声でこっそりと喋る。シンジの手元に転がっていた音楽プレイヤーは、誰も聴いていないテープを回し続けていた。シンジはイヤホンをしていない。

「あの……式波……さん?」

 シンジは緊張して不自然な話し方になる。アスカは、他人行儀なシンジを咳払いで正す。

「今日、ドサクサに紛れて名前呼んだでしょ。特別にアスカでいいわよ。あたしもバカシンジって呼ぶから」

「じゃあ、あの……アスカはどうしてエヴァに?」

「愚問ねぇ……。黙ってなさいよ、バカシンジ」

 ぐうの音も出ないシンジは、布団に視線を落とす。

「自分の為よ。エヴァに乗るのは。あんたはどうなのよ」

「よく……わかんない」

「……あんたバカ? そうやって責任逃れしてるだけなんでしょ?」

 アスカは声のトーンを下げたまま、背中のシンジに話し掛ける。

「父さんに褒めてほしいのかな? 今日は、初めて褒めてくれたんだ。初めて褒められるのが嬉しいと思った。父さん、もう僕のこと認めてくれたのかな? ミサトさんの言ってた通りかもしれない」

 シンジは包帯だらけの自分の手を見つめながら、父親の言葉を思い返す。

「あんたってホントにバカね」

 アスカは、シンジの言葉を聞いて、少しだけシンジとの距離、自分の中の自分との距離を見つめなおす。

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

 翌朝、空は快晴、学校は生徒で賑わっていた。

「さぁてぇ! メシやメシぃ! 学校最大の楽しみやからなぁ」

 トウジは購買で買ったパンを両手一杯に抱えて、満面の笑みを浮かべて教室へ戻る途中だった。トウジが教室へ入ると、奥の方からアスカの声が響いた。

「えぇー!? お弁当持ってきてないの?」

 アスカは、シンジの机に手をついて、シンジに詰め寄っていた。

「今朝は宿題があって作る時間なかったんだよ」

 シンジは困り果てた表情でアスカをなだめる。

「だからって、このあたしにお昼なしで過ごせってーの? あんたはっ!」

「だから明日はちゃんと作るよ」

 そんなやり取りをする二人を見てトウジが冷かしを入れる。

「なんや? また夫婦喧嘩かいな」

「違うわよ!」「違うよ!」

 アスカとシンジは顔を真っ赤にして否定する。

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

 次の朝。シンジはミサトの家のキッチンでウインナーを焼いてみんなの分の弁当を作っていた。

「アスカぁー洗顔フォーム貸して」

 洗面所からミサトが大声を出す。

「いい加減にしてよミサトぉっ! 自分で買ってきなさいよっ!」

「けちん坊!」

 

 お昼を知らせるチャイムの音が校舎に鳴り響くと、トウジはいつも通り上機嫌になって足取りを軽くする。

「さぁて、メシやメシ」

「んん〜。今日はまぁまぁね。サボった分味は落ちてるけど」

 教室でシンジの作った弁当箱を開けたアスカは、一人でもくもくと食べ始める。その時、アスカの席の前に一人の女子生徒が歩み寄る。

「あの、アスカさん? 一緒に食べてもいい?」

 恥ずかしそうな顔でアスカにお願いするその女子生徒は、学級委員長のヒカリだった。

「いいけど、弁当は分けないわよ」

 アスカは不思議そうな顔をしてから、さっと弁当箱を手に持って隠すように後ろへ下げる。それでもヒカリは、嬉しそうな顔をしてアスカに自分の弁当箱を持って見せる。

「はいこれ」

 窓際の席で校庭を眺めていたレイに、シンジが弁当を差し出す。シンジが両手で持っているそれは、オレンジ色のナプキンに包まれていて、結び目には箸入れが刺さっていた。

「え?」

「いつも食べてなさそうだったから」

 レイは驚いた様子でシンジを見上げて、しばらくしてから小さな声で「あ……ありがとう」とつぶやく。アスカはその様子をじっとりと眺めていた。ヒカリは嬉しそうにアスカに話掛ける。とても不機嫌そうなアスカはそれどころではない様子だった。

「ヒカリ……だっけ? 残り、食べていいわよ」

 アスカは食べ残した弁当を、ヒカリの方へ肘で押してよこす。

「え……?」

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

「ふぁーお腹満腹っ! ご馳走様でしたっ!」

 NERVネルフの食堂で弁当を食べ終わったミサトは、両手をパチンと合わせてお辞儀をする。

「遅い昼メシだな」

 そう言って加持はミサトのテーブルに缶コーヒーを置くと、後ろからぐるりと隣の席へ回り込む。

「あ……ありがと」

「シンジ君に作ってもらってるんだって? ま、キミは手料理ってガラじゃないしなぁ」

 加持は冗談を言いながらミサトの隣にある椅子を引くと、いやに近い距離に腰を下ろした。

「……そうねっ。暇のあんたと違って現場の管理職はたんまり仕事があんのよ」

 ミサトはおもむろにノートパソコンを開いて、加持から目を背ける。

「相変わらず真面目だなぁ。まぁそこが葛城のいいとこだが、弱点でもある。この前の時だってリっちゃんとやり合ったって聞いたぜ? もうちょっと余裕持てよ」

「あいにく私の器は責務でいっぱいなのよ」

 ミサトはノートパソコンのトラックパッドの上で指を持て余していた。

「緊張感ありすぎると男にモテないぞ?」

「余計なお世話よっ」

 カチンときたミサトは加持の方を睨みつけようとした。しかし、ミサトをじっと見つめる加持の目を見て、照れで怒りを吹き飛ばされてしまう。

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

 その日の夜。レイはシンジから借りた弁当箱を明日返そうと思い、洗って乾かしていた。レイはベッドの上にうつ伏せに寝転んで、今日の出来事を思い返していた。

「ありがとう……感謝の言葉……初めての言葉。あの人にも、言ったことなかったのに」

 そう言ってレイは枕の上に置いた手を見つめる。

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

「起立! 礼! 着席!」

 委員長のヒカリが朝の挨拶の号令を掛ける。生徒が着席し終わると、先生は窓際の席に目を向けた。

「ん? 綾波はまた休みか。まぁいい……」

 その後、シンジはレイの事を気にして、窓際の席を見ていた。

「(昨日、元気そうだったのにどうしたんだろう?)」

 その時、加持に招待された施設で水槽の前で言ったレイの言葉が思い出される。

「私と同じ」

「(ここでしか生きられない……どういう事だ?)」

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

 その時、レイはNERVネルフ地価実験施設の水槽で、L.C.L.に浸かっていた。

「レイ……食事にしよう」

 目を閉じるレイの前に、ゲンドウが姿を見せる。

「はい」

 その後、二人は司令室に移動して長いテーブルで食事を取る。

「碇司令……」

 ふいに、レイが話しかける。

「何だ?」

「食事って……楽しいですか?」

「ああ」

「誰かと一緒に食べるって、嬉しいですか?」

「ああ」

「料理って作ると喜ぶ……ですか?」

「ああ」

「碇司令……今度……碇君やみんなと一緒に食事……どうですか?」

「その時間は……」

 ゲンドウは、その申し出を断ろうとする。しかし、レイの真っ直ぐ見据える瞳を見ていると、ユイの顔が思い出された。

 ――あなた、シンジよ。

「わかった……。行こう」

 その言葉を聞いて、レイはほっと肩の力を落として微笑む。

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

 NERVネルフシンクロテスト施設。L.C.L.に浸けられたエントリープラグが並ぶ巨大なプールで、実験が行われていた。

『パイロット、二次シンクロ状態に異常なし。精神汚染濃度、計測されず』

 シンジ、レイ、アスカの三人は、データ収集のためエントリープラグ内に入り込んでテストを受けていた。

「あーあぁ。退屈ねぇ。使徒が来ないとチェックばっか! まいっちんぐね」

 アスカは聞こえるように不満を漏らす。コントロールルームでは、ミサトがオフィスチェアに乗ってぐるぐる回りながらそれを聞いていた。

「いーんじゃないのぉ? 使徒の来ない、穏やか〜な日々を願って、私らは働いてんの、よっと」

「昨日と同じ今日、今日と同じであろう明日。繰り返す日常を謳歌。むしろ、感謝すべき事態ね」

 リツコはコンソールに寄りかかりながら、コーヒーを飲んでいた。その時、なにかを知らせるアラームが入る。

「チェック終了です。モニター、感度良好」

 マヤの報告を受けて、リツコはパイロットに通信を入れる。

「お疲れ様。三人とも上がっていいわよ」

 シンジは、L.C.L.の中でモニターに映されたレイを見る。しかし、直ぐに通信が途切れてしまう。

『L.C.L.排水開始、3分前……』

 

「僕が言うのもなんですけど、こうも損傷が激しいと、作戦運用に支障が出てます。バチカン条約、破棄していいんじゃないすか?」

 従業員用の列車に乗ってミサトとリツコ、マコトとマヤは移動中だった。マコトはエヴァの横を通り掛かった際に苦労をぼやく。

「そうよねぇ……。一国のエヴァ保有数を3体までに制限されると稼動機体の余裕ないもの」

 ミサトもその意見には同意する。

「今だって初号機優先での修復作業です。予備パーツも全て使ってやりくりしてますから、零号機の修復は目処も立たない状況です」

 マヤがそう話す横では、修復中の初号機が巨大な体を横たえていた。

「条約には、各国のエゴが絡んでいるもの。改正すらまず無理ね。おまけに5号機を失ったロシアとユーロが、アジアを巻き込んであれこれ主張してるみたいだし、政治が絡むとなにかと面倒ね」

 さすがのリツコも愚痴をこぼす。

「人類を守る前にすることが多すぎですよ」とマヤが言う。

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