縦書き表示は閲覧環境によって不具合が生じるためベータ版です。

第25話「終わる世界 / Do you love me?」新世紀エヴァンゲリオン(TVアニメ)第弐拾伍話あらすじ

第弐拾伍話「終わる世界」新世紀エヴァンゲリオン第25話のタイトル
©カラー/1995-2014 GAINAX

SNSでシェアする

広告スペース

広告スペース

 存在理由〈レゾンデートル〉

 ここにいても、よいりゆう。

 碇シンジ、彼の場合。

 カヲルは自ら死を願った。シンジはその希望を叶えた。そして最後の使徒は消えた。しかし、そのことによってシンジは苦悩することになる。

 ――何故殺した。

 シンジはその問いに抵抗した。カヲルは使徒だったから。使徒は僕らの敵だから。

 ――同じ人間だったのに?

 シンジは、その問いを否定しようとした。そこにレイが現れる。

「私と同じヒトだったのに?」

「違う、彼は使徒だったんだ」

 シンジは言う。

「だから殺したの?」とレイが問う。

 そうしなければ自分が死ぬ。みんなが殺されていたんだ、と言ってシンジは正当化しようとする。仕方なかったんだ、と自分に言い聞かせる。望んでやったことじゃない。

 ――だから殺した。

「助けて」

 ――だから殺した。

「誰か助けて」

 ――だから殺した。

 シンジは苦悩し、叫ぶ。

「お願いだから誰か助けてよぉぉぉっ!」

 夜の湖。水際に座るシンジとその横に佇むミサトの姿があった。

 生き残るのはカヲルの方だったんだ、とシンジは言う。自分よりもずっといい人だったのに、と言ってカヲルが生き残るべきだったんだとミサトに話す。ミサトは、シンジは悪くないと言った。生き残るのは生きる意志を持った者だけ。カヲルは死を望んだ。生きる意志を放棄して見せかけの希望にすがったのだと伝える。

 シンジは不安に苛まれる。本当にこれで良かったのか、自分はどうしたらいいのか、次第に分からなくなっていく。

 ――何が怖いのか?

 また問いが繰り返される。

 ――何が怖いのか?

「自分が」

 ――何が怖いのか?

「嫌われること」

 ――何が怖いのか?

「誰に……? 誰だ……? それは……」

「父さんだ。父さんに捨てられた。嫌われたんだ」

 シンジは人に嫌われた時にどうしたらいいのかが分からなかった。行き場を見失ったシンジは、霧に包まれた精神の溝に迷い込む。そこでミサトの気配を感じて振り返る。が、そこには誰もいなかった。自分は、これからどこへ行けばいいんだと問いかけるシンジ。しかし、そこには誰もいない。ミサトも、アスカも、綾波も、トウジも、ケンスケも、リツコも、加持も、父も、母も。シンジに答えてくれる人は、誰もいなかった。

 すると、目の前にエヴァンゲリオン初号機が現れた。結局、好きな人を殺してまでエヴァに乗るしかないのか。そうシンジはつぶやいた。父・ゲンドウや、みんなの言う通りに、またこれに乗って戦わなければならないのか。シンジは叫ぶ。

「母さん、何か言ってよ、答えてよ!」

 ――何故エヴァに乗るのか?

 根本的な問いに対して、みんなが乗れって言うから、とシンジは答える。

 ――だからエヴァに乗るのか?

 それがみんなの為だから、いいことじゃないか、と続ける。

 ――他の人の為にエヴァに乗るのか?

 そうすればみんなが褒めてくれる。大事にしてくれる。

「嘘ね!」そう言ってシンジを見下すアスカが現れた。

「あんたバカぁ? 結局、自分の為じゃないの!」

 アスカはシンジを責める。

「そうやってまた自分に言い訳している」

 何も言い返せないシンジ。

「他人の為に頑張ってるんだって思うこと自体、楽な生き方してるって言うのよ」とアスカが言う。

 それに対してシンジは、そうなのかな、としか言い返せない。

「要するに寂しいのよ。シンジは」

 シンジは椅子に座ったまま下を向いている。彼の顔に人差し指を突きつけてアスカはたたたみ掛ける。

「そんなものはただの依存、共生関係なだけじゃない!」

 その言葉を聞いてシンジは自問自答する。

「そうかも知れない……」

「自分が人に求められることをただ望んでるだけじゃないの」

 シンジは返す言葉もなく思い詰めていく。

「人から幸せを与えられようと、ただ待ってるだけじゃないの。偽りの幸せを!」

 その時、レイがアスカの背後に現れた。

「それはあなたも同じでしょ」

 アスカは冷や水を浴びたような顔をして、自尊心が揺らぐのを感じる。

 第2のキャラクター。

 惣流・アスカ・ラングレー、彼女の場合。

 水の中で胎児のようにうずくまるエヴァ弐号機。アスカは、いつのまにかエヴァに乗せられていた。エヴァを動かすことができない自分を、誰も必要としないと思うアスカに、レイが語りかける。

「他人の中に自分を求めているのね」

 ――分離不安。

「一人になるのが怖いんでしょ」とレイが言う。

 ――分離不安。

「他人と一緒に、自分もいなくなるから怖いんでしょ」とレイが言う。

 ――分離不安。

「だからエヴァに乗ってる」アスカは言った。

 ――愛着行動。

 アスカは、レイの言葉を頭を抱えて振り払おうとする。

「うるさい! うるさい! あんたみたいな人形に言われたかないわよ!」

 第3のキャラクター。

 綾波レイ、彼女の場合。

「私は誰?」

 レイは意識を取りも戻すたびに自分を確かめなければならなかった。しかし、もう気づいていた。自分の姿をした別の〝アヤナミレイ〟がいることを。それがみんな〝綾波レイ〟と呼ばれていることを。

「私は私」

 アヤナミレイは言う。私は偽りの魂を碇ゲンドウという人間によって創られたヒトなのだということを。人の真似をした偽りの物体に過ぎないということを。本当のあなたはそこにいるの?

「私は私」

 レイは思う。

「私はこれまでの時間と、他の人たちとの繋がりによって私になったの。他の人たちとの触れ合いによって、今の私が形作られている。人との触れ合いと時の流れが、私の心の形を変えていくの」

 ――それが、絆?

「そう。綾波レイと呼ばれる今までの自分を作ったもの。そして、これからの自分を作るもの」

 ――それが、絆。

 でも、本当のあなたは他にいるのよ、とアヤナミレイは言う。あなたが知らないだけ。見たくないから、知らないうちに避けているだけなのだと。

 ――怖いから。

 それは人の形をしていないかもしれないから。今までの〝私〟がいなくなるかもしれないから。

 ――怖いのよ。

 自分がいなくなるのが怖いのよ。みんなの心の中から消えてしまうのが怖いのよ。

「怖い? 分からないわ」とレイは言う。

 自分だけの世界がなくなるのよ、とアヤナミレイは言う。

 ――怖いでしょ?

 自分が消えるのよ、とアヤナミレイが言う。

 ――怖いでしょ?

 その問いに対して、レイは嬉しいと答える。

「私は死にたいもの。欲しいものは絶望。無へと帰りたい」

 しかし、無へは帰れない。〝あの人〟が帰してくれないのだとレイは思う。〝あの人〟が必要とするから自分はいられたのだと言う。

 それももう終わる。その日をずっと願っていたはずなのに、今は、怖い。そう言って目を伏せるレイの前にゲンドウが現れる。

「さあ行こう。今日、この日の為にお前はいたのだ。レイ」

 レイはうなずく。そして、人類の補完が始まる。

Do you love me?

EPISODE:25 Do you love me? / Neon Genesis EVANGELION

 ――再びシンジ。

 シンジは、自分の内面に懐かしい感覚を覚えた。前にも一度あったような、自分の体の形が消えていくような感覚。

「気持ちいい、自分が大きく広がっていくみたいだ。どこまでも、どこまでも」

 ――それは人々の補完の始まりだった。

 人々が失っているもの。喪失した心。その心の空白を埋める。心と、魂の、補完が始まる。

 全てを虚無へと還す、人々の補完が始まった。

「違う。虚無へ還る訳ではない」

 ゲンドウは言う。全てを始まりへ戻すに過ぎない。この世界に失われている母へと還るだけだ。全ての心が一つとなり、永遠のやすらぎを得る。ただそれだけのことに過ぎないと。

 そこには、銃弾に倒れた後のリツコとミサトの姿があった。

「それが補完計画?」

 幽閉されたリツコの下へ訪れていたミサトは、人類補完計画の全容を明かされる。

「私たちの心には、常に空白の部分、喪失した所がある」とリツコは言う。

 ――それが心の飢餓を生み出す。それが心の不安、恐怖を生み出す。

 人は誰しも心の闇を怖れ、そこから逃げようと、それを無くそうと生き続けている。人である以上、永久に消えることはない。そのための補完計画だった。ミサトは納得できなかった。他人が勝手に人の心をひとつにまとめ、互いに補完しあおうという考え方を。そんなものは、ただの馴れ合いだと思った。

 しかしリツコは、「だけど、あなたもそれを望んでいたのよ」と言ってミサトの口を止めた。

 CASE1:葛城ミサトの場合(PART1)。

 ミサトは、自身の心の中にいるシンジの心と対峙する。それは、シンジが彼の心の中にいるミサトの心を見ていることを意味していた。シンジは、自分を見つけるためには色々な人と触れ合わなければいけないと言う。それと同時に、自分の中の自分、しいては、自分の中の他人を見つめなければならないと言った。

 シンジは問う。

「ミサトさんは何を願うの?」

 ――良い子でいたいの?

 幼い頃のミサトは、とにかく「良い子」でいなければならないと思っていた。

 ――どうして?

 母を助けるため。父が帰ってこないから、母のために良い子でいなければならないと感じていた。しかし、ミサトは母のようにはなりたくないとも思っていた。母は泣いてばかりいた。父がいない時は泣いてばかりいたからだ。それでも、父に嫌われないようにするためにも、良い子でいようとした。そしてついに、父が嫌いになった。良い子も嫌いになった。綺麗な自分を維持することに疲れてしまった。綺麗な振りをする自分に疲れてしまった。だから汚れたい。汚れた自分になりたかった。

「だから抱かれたの?あの男に」とリツコが問いかける。

 ミサトは、好きだったから抱かれたのだと答える。

「本当に好きだったの?」と幼い頃のミサトが問う。

 そうだ、とミサトは答える。あの人は、ありのままの自分を受け入れてくれた。

 ――本当に?

 優しかったのだ、とミサトは答える。

 かつて、加持のアパートにいた頃の自分の姿。二人の時間。二人だけの光景。

 シンジは、怪訝な面持ちでそれを見ていた。

「イヤッ! 止めて、こんなところをシンジ君に見せないで!」と言ってミサトは顔を覆った。

「今更恥ずかしがることもないだろ」と加持が言う。

 好きな男の前では平気なのに、どうして恥ずかしいの、と自分の声が聞こえる。

「イヤッ! 止めて!」

 このありさまをシンジ君に見せることが、本当は嬉しいくせに。

「ウソよ! 違う、違うわよ!」と言ってミサトは頭を抱える。

 どうかしら。本当は父親の前で見せたいくせに。

「違うっ!」

 あなたは、加持の中に父親を求めていたのだと言う声が聞こえる。

 ミサトは違う、と言ってそれを否定する。

 彼女は加持と二人、夜道を歩いている。

 加持の中に父親を見つけたから逃げ出したのだとミサトは言う。本当は、嬉しかったから、それが快感だったから、居心地が良かったから、だからこそ怖くなったのだと加持に告白する。そんなミサトに、加持は優しい言葉を掛ける。

「やさしいのね、加持君。そのやさしさでお願い、私を汚して」

 加持は冷静な言葉で諭そうとする。

「で、自分を大切にしろって言うんでしょ」とミサトは内心で考える。

 男はそうやって私を置き去りにして仕事に戻っていく。自分の世界に行ってしまうのだとミサトは思う。

「お父さんと同じなのよ……」と幼いミサトが言う。

 辛い現実から逃げてばかりいる自分。汚れてしまった自分。都合のいい自分。認められているのは、認められようと演じている自分。それは本当の自分ではない。本当の自分はいつも泣いてるくせに。

 ――私は幸せなの?

「私は幸せなの」ミサトは自問自答する。

 ――私は幸せなの?

「私は幸せなの」

 ――私は幸せなの?

「違う、これは幸せなんかじゃない!」

 ――幸せって何?

「こんなの本当の自分じゃない。そう思い込んでるだけなの!」

 苦悩するミサトを傍観するシンジは「そうしないと僕らは生きていけないのか」とつぶやく。

 一緒にいないと怖いんだ。誰かが隣で寝ていないと不安なんだ。心の喪失に耐えられない。

 だから誰とでもいいんですね?

 心の葛藤に他人の声が重なる。

「違う!」

 ミサトはそれを振り払おうとする。

 簡単な快楽に溺れたいだけ。刹那的な逃避で心を癒したいだけ。その為に男を利用しているだけ。

「違う! 違う! 違う!」

 苦悩するミサトの姿を、シンジはただ見守ることしか出来ないでいた。

 ――彼女は果たして、何を望むのか?

 CASE2:惣流・アスカ・ラングレーの場合(PART1)。

 アスカは、彼女の心の中にいるシンジの心と対峙する。それは、シンジが自分の心の中にいるアスカの心を見ていることを意味していた。

 シンジは問う。

「アスカは何を願うの?」

 幼い頃のアスカは一人で生きることを決意していた。もう泣かないと決めていた。早い時期に母を亡くしたアスカの父親は、別の女性と再婚していた。アスカは心を閉ざしてそれを受け入れなかった。都合のいい大人の世界を垣間見て生きてきた。でも、本当は寂しかった。

 産みの親であるキョウコは、病院のベッドで別人になり果てていた。それでも唯一自分の母親だった。しかし、その母にも必要とされなくなってしまった。彼女は、彼女の中の娘を道連れにして、自らの命を絶った。その光景をアスカは見てしまった。

「あの時、ママが天井からぶら下がってたの。その顔はとても嬉しそうに見えたわ。でも、私はその顔がとても嫌だったの。死ぬのはイヤ。自分が消えてしまうのもイヤ。男の子もイヤ、パパもママもイヤ、みんな嫌なの。誰も私のこと守ってくれないの。一緒にいてくれないの……」

 ――彼女は何を望むのか。

 だから一人で生きる。でも一人は辛い。一人はイヤ、一人はイヤ、一人はイヤ。

「僕を見捨てないで……」

「私を捨てないで……」

「私を殺さないで……」

 舞台に立ったシンジ、ミサト、アスカにスポットライトが当たる。

 その光景を見ていたシンジは「これは何?」と漏らす。

 あなたのお父さんが進めていた人間の補完計画よ、と隣に立つミサトが言う。

「これが……」と言ってシンジは言葉を失う。

 真実は私たちにもわからない、とアスカは言う。

 今、自分で感じているものが事実でしかないのだ、とリツコは言う。

 あなたの中のね、とレイが補足する。

 そして、その記憶となるものが君の真実となってゆくのだ、と冬月が続く。

「これが事実? 全ての結果なのか? これが……」

 シンジは未だに信じられないという様子で、みんなの声を聞く。

 たくさんある事実の中のひとつだ、とアスカは言う。

 あなたが望んだ結果なのだ、とミサトが言う。

「僕が望んだ?」

 レイが答える。シンジが破滅を、誰も救われない世界を望んだのだと。

「違う、誰も救ってくれなかっただけだ! 僕を……」シンジは否定した。

 するとリツコは、誰もあなたを救えない、と言った。

 これは君が望んだことだ、と加持は言う。

 破滅、死、無への回帰をあなた自身が望んだのだ、とアスカは言う。

 これが現実なのだ、とミサトは言う。

「現実ってなんだ?」

 ――現実。それはあなたの世界。自分がどう受け止め、どう認めるかを自分自身が決める世界。自分が世界を決めている。自分の心がそうだと決めている世界。生きようとする意志も、死にたいと思う心も、あなた自身が望むこと。

 ――それが現実。

「この暗闇も、この半端な世界も、全て僕が望んだというのか?」シンジは頭を抱える。

 閉鎖された自分一人が心地いい世界を君は望んだのだ、と加持は言う。

 あなた一人の閉塞された空間では人は生きていけない、とミサトは言う。

 でもそれを願ったのはシンジ自身なのだ、とアスカは言う。

「それが導き出された小さな心のやすらぎの世界」

 ミサトは言う。

「あなた自身が導いた、この世の終わりなのよ」

 ――そして、補完への道は、つづく。

広告スペース

広告スペース

SNSでシェアする