アスカの母、惣流・キョウコ・ツェッペリンは、ゲヒルンの科学者であった。彼女は、エヴァンゲリオンへの接触実験の中で、精神汚染を引き起こてしまう。その後、精神崩壊を起こして入院したキョウコは、病院内で女の子の人形を「アスカ」と呼ぶようになってしまい、後に自ら命を絶った。
孤独な幼少期を過ごしたアスカは、その環境の中で、自分で考え自分で決めることを学んだ。
シンクロ率が安定しないアスカを見て、リツコはレイの零号機の修理を優先させる。その時、ミサトは初号機と向き合っていた。セカンドインパクトを引き起こした原因までをも利用して生きようとする人類。自分はエヴァを憎んでいるのかもしれない、それは父の仇なのだろうかと思うミサト。そこにミサトを呼び出す声がする。
ミサトを呼び出した先で、オペレーターの日向マコトは、世界7個所でエヴァ13号機までの建造開始の情報が入ったことを伝える。なぜこの時期に非公式で量産を急ぐのか、委員会は何か目的があるのかとミサトは疑った。
ミサトの家。シンジとアスカは、無言で食事を取っていた。ギスギスした重い空気を気に掛けたミサトは、二人の様子を伺う。その時、電話の呼び出し音が鳴った。丁度席を立ったアスカに、ミサトは電話を取るように促す。しかし、どうせ加持からミサト宛の電話だろうと言って、アスカは取ろうとしなかった。
「それはないわ」とミサトが低い声で言う。
すると、シンジが黙って受話器を上げる。アスカへ、母からの電話だと言って、シンジが受話器を向けた。それを聞いたアスカは、シンジの手から受話器を奪い取ると、流暢なドイツ語で話し始めた。その光景を眺めて、シンジは「知らない言葉で話ていると、まるでアスカが知らない人みたいだ」と思う。
長い会話が終わると、ずいぶん長電話だったじゃない、とシンジは言った。アスカは覚めた態度で「いつものコミュニケーションってやつ」と答える。いいなぁ、家族の会話。と言ってシンジは羨んだ。嫌いではないが、本当の母親ではないとアスカは言う。感傷的な表情になりそうな自分に気づいて、アスカは「なんであんたにこんな事話さなきゃなんないのよ!」とシンジにぶつかる。アスカは、あんたなんかに同情されたらこの私もおしまいだわ、と言ってそっぽを向いた。
シンクロ率の低下が止まらないアスカの調子を見て、リツコは弐号機パイロットの変更もありうると覚悟する。ミサトは、アスカのプライドが限界まで来ていることを感じ取って、一緒に暮らすのも限界かもしれないと漏らした。ミサトは、リツコにきつく当たり、自分の余裕の無さも見せる。
テストを終えて、手洗いに行ったアスカはエレベーターでばったりとレイに出会った。無言のまま上っていく閉ざされた空間。心を開かなければ、エヴァは動かないわ、と言って無表情のレイが沈黙を破った。レイは、エヴァには心があることをあなたは分かっているはずだ、とアスカに言う。アスカはレイに向かって、私がエヴァに乗れないのがそんなに嬉しいのかと怒鳴る。
「シンジだけじゃなく、機械人形みたいなあんたにまで同情されるとは、この私もヤキが廻ったわね」とアスカが言うと、「私は人形じゃない」とレイが答えた。それを聞こうとしないアスカは、人に言われたまま動くくせに、と言って「あんた碇司令が死ねといったら死ぬんでしょ!」とたたみ掛ける。レイは身動き一つしないまま、そうよと呟いた。アスカは込み上げたものを、平手でレイの左頬にぶつけた。
アスカは、目的の階に到着して開放されたエレベーターのドアから後ずさりするように外へ出ると「やっぱり人形じゃない!あんたって人形みたいで、ほんと昔っから大っ嫌いなのよ!」とレイに向かって叫んだ。
――みんな、みんな、大っ嫌い!
弐号機と向き合うアスカは、私の人形なんだから、黙って私の言う通りに動けばいいのよ、と巨体に向かって語り掛けていた。
「なんで兵器に心なんか要るのよ、邪魔なだけなのに」と言うと、自分の命令に従うように指示を出している自分の姿の滑稽さに気づいて、バカみたいと呟く。その時、警報が鳴り響き、第一種戦闘配置のアナウンスが流れる。新たな使徒が現れたのだ。
Don’t Be.
発令所は、衛星軌道上に巨大な羽を広げた光る物体を捉えていた。第15使徒アラエルは、不気味な静けさで漂っている。ミサトは、射程圏外のため迂闊に動けないと判断する。ひとまず、準備ができているレイの零号機を、超長距離射撃のために発進させる。しかし、バックアップに回るよう指示を受けたアスカが、勝手に弐号機で飛び出してしまう。
アスカの命令を無視した行動は、これを失敗したら弐号機を下ろされることを覚悟してのことだった。弐号機はポジトロンライフルを遥か上空の目標に向ける。痺れを切らすアスカに、突然眩い光線が降り注ぎ、発令所に緊張感が走った。しかし、熱エネルギー反応は無い。
心理グラフが乱れ、精神汚染が観測される。リツコは、使徒が心理攻撃を実行しているのかと推測する。精神を乱され、アスカはライフルを乱発する。弐号機は玉切れになるまで街を破壊していった。
「私の心まで覗かないで!お願いだから、これ以上心を侵さないで!」
アスカは精神回路をズタズタにされてゆく。一旦戻るようにミサトが出した指示を、今戻るなら、ここで死んだ方がマシだと言ってアスカは拒絶する。その間、別の角度で狙いを定めていた零号機が、超長距離射撃を実施。弾道は真っ直ぐ使徒を捕らえるが、A.T.フィールドによって完全に阻止される。使徒の放つ光を見て、リツコはアスカの精神波長を探っているみたいだと感じ取る。
「まさか、使徒は人の心を知ろうとしているの?」
アラエルの光にあって、アスカは深層心理に潜っていた。アスカの頭に、過去の映像が掘り起こされ、母の記憶が蘇る。嫌なことを思い出して苦しむアスカ。もう止めてと叫ぶアスカ。
コックピットでうずくまるアスカは「……汚された……私の心が……加持さん!……汚されちゃった……どうしよう……汚されちゃったよぉ……」と震える声を出して泣いた。
その事態を見かねたシンジが、初号機で出ると主張する。使徒が零号機の射程圏内へ来る可能性は限りなく低かった。初号機を侵蝕される事態を避けたいゲンドウは、ドグマを降りて槍を使えとレイに指示を出す。A.T.フィールドの届かぬ衛星軌道の目標を倒すにはそれしかないと言って急がせる。アダムとエヴァの接触は、サードインパクトが起こる危険性を主張して、ミサトが反対する。しかし、聞く耳を持とうとしないゲンドウの態度を見て、ミサトはセカンドインパクトが起こった本当の原因は違うところにあるのだと勘ぐる。
ターミナルドグマへ降り立った零号機は「第1使徒」と呼ばれる物体に突き刺さったロンギヌスの槍に手を掛けた。まだ早いのではないか、と冬月は躊躇した。ゲンドウは、時計の針は元には戻らないが、自らの手で進める事はできると言って止めようとはしなかった。
ロンギヌスの槍を持った零号機が地上へと姿を現す。ロンギヌスの槍を初めて見たミサトが表情を強張らせる。カウントダウンが開始される。投擲体制に入る零号機。
「3、2、1」……「ゼロ!」
助走を付けた零号機は、勢い良く槍を天に放った。雲を引き裂いて直進した槍は、そのまま地球の遥か上空に浮かぶ目標目掛けて飛んで行った。強烈な勢いで使徒に迫った槍は、A.T.フィールドごと貫いて、その光る鳥のような姿を消滅させた。
使徒消滅と共に、エヴァ弐号機の開放が確認させる。ロンギヌスの槍は、第一宇宙速度を突破し、月軌道に移行。回収は不可能と判断された。
レイの手によって助けられたと感じたアスカは、自分の殻に閉じこもってしまう。無事に戻ったことを喜ぶシンジの声を、そんな事なら死んだ方がマシだったと言って跳ね除けた。