新世紀エヴァンゲリオン劇場版『Air/まごころを、君に / THE END OF EVANGELION』のストーリーとセリフまとめ

新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に

 むせかえるような夏の暑さ。蝉の鳴き声で満たされた青空。羽の生えた巨人の眠る湖は、透き通るような青をそのまま映す鏡になっていた。そこに、一人の少年が汗を流して佇んでいた。


 第一脳神経外科
『避難塔の第二、第三区画は本日18時より閉鎖されます。引継ぎ作業は全て本日16時30分までに終了してください』
 惣流・アスカ・ラングレーの病室。心電図は一定のリズムで電子音を刻む。病室のベッドの上で横になっているアスカの身体は、呼吸に合わせて静かに肩を動かすだけだった。
「ミサトさんも、綾波も怖いんだ。助けて……助けてよアスカ」
 病室を訪れたシンジは、ベッドの傍らに立って目を覚まそうとしないアスカをじっと見ていた。
「ねえ……起きてよ。ねえ……目を覚ましてよ」
 いつまでも返事をしないアスカの肩を揺さぶって起こそうとするシンジ。
「ねえ、ねえ……アスカ……アスカ、アスカ!」
 ベッドが動くほど強く揺すっても起きないアスカに、シンジは泣き付く。
「助けて……助けてよ……助けてよ…………助けてよ……助けてよ」
 シンジはアスカの肩にすがるようにして泣き続ける。
「またいつものように、僕をバカにしてよ。……ねえ!!」
 勢い良く肩を引き寄せた反動で、横を向いていたアスカの体が仰向けになる。体に貼られたセンサーの一部が剥がれ落ち、服がはだけてアスカの胸があらわになった。シンジは、自分がやってしまったことに気づいて言葉を失う。心電図は一定のリズムで電子音を刻み続けていた。アスカの姿に興奮するシンジの声が病室に響く。
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ…………うっ」
 シンジは自分の手に付いた自分の体液を見て、衝動的な行為を後悔する。
「最低だ……俺って」


 灯りを落とした薄暗い第2発令所の中でオペレーターのマヤ、マコト、シゲルの三人は、今後のNERVについて思案していた。
「本部施設の出入りは、全面禁止?」
 マヤは二人に向かい合う形で椅子に座り、ビスケットをつまみながら声を上げる。
「第一種警戒体制のままか」
 マコトは前かがみになってコーヒーを両手で持ちながら緊張の面持ちを見せる。
「なぜ……最期の使徒だったんでしょ。あの少年が」とマヤが言った。
「ああ。全ての使徒は、消えたはずだ」
 シゲルは椅子に座る二人の前に立ってコーヒーを飲んでいる。
「今や平和になったってことじゃないのか」とマコトが言った。
 マヤは心配そうな顔で二人に聞く。
「じゃあここは?エヴァはどうなるの?先輩も今いないのに」
「NERVは、組織解体されると思う。俺たちがどうなるかは、検討もつかないな」
 そう言って、シゲルはカウントダウンを進めるモニターの方に目を向ける。
 マコトはそれを見て「補完計画の発動まで、自分たちで粘るしかないか」と言った。


 エヴァと使徒の戦いによって作られた真新しい湖が見える丘の上。日が暮れて街灯が光を灯し始める時間。ミサトは空き地に車を止め、今後の成り行きについて考えていた。
「出来損ないの群体として既に行き詰った人類を、完全な単体としての生物へと人口進化させる補完計画……正に理想の世界ね。そのために、まだ委員会は使うつもりなんだわ。アダムやNERVではなく、あのエヴァを」
 ミサトは姿勢を起こすと窓の外に目を向ける。
「加持君の予想通りにね」


 ゼーレの会合にて、キールが第一声を発する。
「約束の時がきた。ロンギヌスの槍を失った今、リリスによる補完はできん。唯一、リリスの分身たるエヴァ初号機による遂行を願うぞ」
 ゲンドウはいつものように机の前で手を組みながらモノリスを見据えている。モノリスたちは、後ろ手を組んでゲンドウの横に立っている冬月とゲンドウを見下ろすようにして、暗闇に浮かび上がっている。
「ゼーレのシナリオとは違いますよ」
 キールの要望にまずゲンドウが答えた。
「人は、エヴァを生み出すためにその存在があったのです」と冬月は言った。
「人は新たな世界へと進むべきなのです。そのためのエヴァシリーズです」とゲンドウが続ける。
 その言葉を受けてモノリスNo.09が発言する。
「我らは人の形を捨ててまで、エヴァという名の箱舟に乗ることはない」
 モノリスNo.12が続けて発言する。
「これは通過儀式なのだ。閉塞した人類が再生するための」
 他のモノリスからも意見が上がる。
「滅びの宿命は新生の喜びでもある」
「神も人も、全ての生命が死を以って、やがて一つになるために」
 顔の前でじっと手を組んでそれを聞いていたゲンドウが否定する。
「死は何も生みませんよ」
 それを受けてキールがゲンドウに宣告する。
「死は、君たちに与えよう」
 そう伝えると、ゼーレのモノリスは姿を消した。暗闇に戻った空間に向かって冬月が言う。
「人は、生きて行こうとするところにその存在がある。それが、自らエヴァに残った彼女の願いだからな」


 ベッドの上で目を覚ますレイ。体を起こすと、そこは自分のマンションの部屋だった。涼しげに鳴く虫の歌声が聞こえる。窓から差し込む青白い月明かり。それをゆっくりと雲が覆い隠してゆく。レイは玄関の扉を開けて出て行く。部屋の床には、大切にしていたはずの眼鏡が、粉々に割れて落ちていた。


 シンジはイヤホンで耳を塞ぎながら、いつものようにベッドで横になっていた。しかし、プレイヤーの数値はゼロのまま、音は流れていない。外から救急車のサイレンの音が聞こえる。とても静かな夜。


 ミサトは、NERVのコンピューターに侵入し、今まで知りえなかった情報を盗み出そうとしていた。すると、ある情報へのアクセスに成功し、ノートパソコンのキーを叩く手を止める。
「そう……これがセカンドインパクトの真意だったのね」
 そう言った瞬間、モニターに映し出された文字が、瞬時に「DELETED」で上書きされていく。
「気付かれた!?」
 ミサトは急いで銃を構えて立ち上がる。その時、コーヒーの空き缶に手がぶつかり、音を立てて転がる。
「いえ、違うか。始まるわね」
 ミサトが気付くと同時に、静けさを取り戻したかに見えたコンピュータールームの電源が落ちる。

『第六ネット音信不通』
 第2発令所は、けたたましい警告音に包まれていた。
「左は青の非常通信に切り替えろ。衛星を開いても構わん。そうだ、敵の状況は?」
 内線で指揮を執る冬月。
「外部との全ネット、情報回線が一方的に遮断されています」
 モニターの状況を説明するオペレーターの声。
「目的はMAGIか」
 受話器を置いて冬月がつぶやく。
「全ての外部端末からデータ進入、MAGIへのハッキングを目指しています」
 シゲルが冬月へ現状を通達する。
「やはりな。侵入者は松代のMAGI二号か?」
 冬月がシゲルに確認を取る。
「いえ、少なくともMAGIタイプ5、ドイツと中国、アメリカからの進入が確認できます」
 シゲルは、モニターに向き直して情報を伝える。
「ゼーレは総力をあげているな。兵力差は1:5……分が悪いぞ」
 冬月は敵の思惑を推測し、眉をひそめる。
『第四防壁、突破されました』
「主データベース閉鎖、駄目です!進行をカットできません!」
 対応を試みるマコトは相手の速さに断念してキーを打つ手を止める。
「更に外殻部侵入!予備回路も阻止不能です」
 モニターに映る状況と格闘しながらマヤが報告する。
「まずいな、MAGIの占拠は本部のそれと同義だからな」
 そう思いながら、次の一手をどう打つのか、ゲンドウの方に目を向ける冬月。

 リツコは、暗い隔離室のベッドに腰を下ろしてうなだれていた。そこに訪問者が現れ、自動ドアが開く。
「分かってる。MAGIの自律防御でしょ」
「はい。詳しくは第2発令所の伊吹二尉からどうぞ」
 用件を受けたスタッフは姿勢を正してリツコに伝える。
「必要となったら捨てた女でも利用する。エゴイストな人ね」
 そう言ってリツコは気だるそうに立ち上がる。

「状況は?」
 NERVの廊下を歩きながら髪留めをほどいたミサトは、携帯電話を手にしてマコトと連絡を取り合う。
「おはようございます。先ほど、第2東京からA-801が出ました」
「801?」
 怪訝な表情の声を上げたミサトにマコトが説明する。
「特務機関NERVの特例による法的保護の破棄、及び指揮権の日本国政府への委譲」
「最後通告ですよ。ええそうです。現在MAGIがハッキングを受けています。かなり押されています」
 そう言い終わると、マコトは自分の持っていた受話器をマヤの方へ向ける。
「伊吹です。今、赤木博士がプロテクトの作業に入りました」
 マコトの受話器に向かって顔を近づけて話すマヤ。その背後からリフトエレベーターが到着する音が聞こえて、マヤとマコトが振り返る。すると、そこには携帯電話を耳に当てたまま、驚きの顔をしたミサトが立っていた。
「リツコが?」

 リツコは、スーパーコンピューターMAGIの本体内部に入り込んで作業をしていた。
「私、馬鹿なことしてる?ロジックじゃないものね、男と女は」
 ノートパソコンのキーを叩く手を止めると、眼鏡を上げて「CASPER」と書かれたMAGIのコアを手で撫でる。
「そうでしょ。母さん……」

『強羅地上回線、復旧率0.2%に上昇』
『第3ケーブル、箱根の予備回線依然不通』
 第2発令所に届くオペレーターのアナウンス。
「あと、どれくらい?」
 マコトの操るコンソールの端に腰を下ろして状況を眺めていたミサトは、コーヒーを飲みながらマコトの方を向く。
「間に合いそうです。さすが赤木博士です。120ページまであと一分、一次防壁展開まで2分半程で終了しそうです」
「MAGIへの侵入だけ?そんな生易しい連中じゃないわ。多分ね……」
 マコトの説明を上の空に聞いて、自分の思考を巡らせるミサト。
「MAGIは前哨戦に過ぎん。奴らの目的は本部施設および残るエヴァ2体の直接占拠だな」
 冬月はゲンドウに敵の本当の狙いを耳打ちする。
「ああ。リリス、そしてアダムさえ我らにある」
 ゲンドウは落ち着いて事の成り行きを見守る。
「老人たちが焦るわけだ」
 冬月は姿勢を戻し主モニターに目を向ける。

「CASPER」まで進行していたMAGIへの侵入が改善され、復旧の兆しがモニターに映し出される。
「MAGIへのハッキングが停止しました。Bダナン型防壁を展開。以後、62時間は外部侵攻不能です」
 マヤは現状を報告する。
 その頃、作業を終えたリツコは、人一人がやっと通れるほどの隙間を這って、MAGI本体の中から出てくる。リツコは愛おしそうな目でMAGI内部を見つめて「母さん、また後でね」とつぶやく。


 NERVの防衛を確認したゼーレは次の策に出る。
「碇はMAGIに対し、第666プロテクトをかけた。この突破は容易ではない」
「MAGIの接収は中止せざるを得ないな」
 その声に対し、キールが次の計画を宣言する。
「出来得るだけ穏便に進めたかったのだが、いたしかたあるまい。本部施設の直接占拠を行う」


 箱根の山道。蝉の鳴き声が響く茂みの中にうごめく人影。
「始めよう。予定通りだ」
 茂みの中に潜んでいた人影が次々と立ち上がる。空には戦闘機、陸路からは戦車。瞬時にNERV本部を包囲する戦略自衛隊。各機体が戦闘配置に付くと、直ぐに攻撃を開始する。次々と被弾するNERV本部。

『第8から第17までのレーザーサイト沈黙』
「特火大隊、強羅防衛線より侵攻してきます」
「御殿場方面からも二個大隊が接近中」
 次々に映像が途絶えるモニターを見てオペレーターが状況を報告する。
「やはり最後の敵は同じ人間だったな」
 冬月がモニターを見つめながら、司令席に座るゲンドウの肩越しに言う。
「総員、第一種戦闘配置」
 ゲンドウがオペレーターに指示を出す。
「戦闘配置?相手は使徒じゃないのに。同じ人間なのに」
 マヤがゲンドウの指示を聞いてわだかまりを覚える。
 マコトは、そんなマヤを見てなだめようとする。
「向こうはそう思っちゃくれないさ」

 兵装ビルが大量のミサイルを発射する。NERV周辺は瞬く間に戦場と化し、戦略自衛隊の攻撃によって爆発が多発する。
 NERV本部への出入り口ゲート前では、見張りの戦闘員が不安な面持ちで銃を構える。すると、忍び込んだ戦略自衛隊によって背後からナイフで奇襲され、血を流して動かなくなる。そして、ゲートのシャッターが開くと大量の戦自隊隊員が侵入を待ち構えていた。
「おい、どうした!おい!」
 異常を知らせるブザーが鳴り響き、ゲート前にいた戦闘員に確認を取ろうとするが、連絡が取れずに慌てる他のNERV戦闘員。
「なんだ?」
 それを見て集まってくる戦闘員たち。
「南のハブ・ステーションです!」
 すると、近くに駐車してあった装甲車が突然爆発を起こし、辺り一面を炎で埋め尽くす。
 NERV本部内で次々と血が流される。第2発令所の空気が張り詰めてゆく。
『台ヶ丘トンネル使用不能』
『西5番搬入路にて火災発生』
『侵入部隊は第一層に突入しました』
『南ハブステーションは閉鎖』
「西館の部隊は陽動よ!本命がエヴァの占拠ならパイロットを狙うわ!至急シンジ君を初号機に待避させて!」
 ミサトは敵の目的を予測してマコトに指示を出す。
「はい!」
「アスカは?」
 続いて、ミサトはアスカの所在を確認する。
「303号病室です」とシゲルが答える。
「構わないから弐号機に乗せて!」
 ミサトは迷わず指示を続ける。
「しかし、未だエヴァとのシンクロは回復していませんが」
 それを聞いてマヤが意見する。
「そこだと確実に消されるわ。かくまうにはエヴァの中が最適なのよ」
 人命を最優先させようとするミサトは口調を強める。
「了解!パイロットの投薬を中断。発進準備」
 マヤはそれに従い指示を回す。
「アスカ収容後、エヴァ弐号機は地底湖に隠して。すぐに見つかるけどケイジよりましだわ。レイは?」
 すぐさまマコトに指示を出したミサトは、シゲルに向かってレイの所在を確認する。
「所在不明です。位置を確認できません」
「殺されるわよ。捕捉急いで!」
 もはや時間の猶予がない状況に、ミサトは危機感を募らせる。

 その時、所在不明のレイは地下施設にあるL.C.L.の水槽に浮かんでいた。裸のまま目をつむって、何かを吸収するように全身を解放していた。

 発射の準備が整った弐号機はすぐさま射出される。
「弐号機射出。8番ルートから推進70に固定されます」とマコトが報告する。
「続いて初号機発進!ジオフロント内に配置して」
 マコトの後ろから身を乗り出してミサトが指示を続ける。
「だめです!パイロットがまだ!」とシゲルが報告する。
「え?」
 その報告を受けてミサトがモニターを確認すると、そこには階段の下で膝を抱えてしゃがみ込んでいるシンジの映像が映し出されていた。
「なんて事!」
『セントラルドグマ第二層までの全隔壁を閉鎖します。非戦闘員は第87経路にて待避してください』
 その間に、次々と通路やパイプラインのシャッターが閉まっていく。その途中で爆発が起こる。
「地下、第3隔壁破壊。第二層に侵入されました」
 シゲルの報告を聞いて冬月が事態を危惧する。
「戦自、約一個師団の投入か。占拠は時間の問題だな」
 それを聞くと、静観を保っていたゲンドウが立ち上がる。
「冬月先生、後を頼みます」
「分かっている、ユイ君によろしくな」
 冬月は落ち着いた様子でゲンドウを見送る。

 物量と火力でNERV戦闘員を圧倒していく戦略自衛隊。炎に包まれていくNERV本部。

『第2グループ応答なし』
『72番電算室連絡不能』
「52番のリニアレール、爆破されました」
 次々に起こる障害に、何とか追いつこうとするシゲル。
「タチ悪いなぁ、使徒のがよっぽどいいよ」
 マコトはモニターを見ながら苛立ちを隠せない。
「無理もないわ、みんな人を殺すことに慣れていないものね」
 拡大し続ける被害状況を見ながら、ミサトは腕を組んで考える。

 同僚の遺体を泣きながら引きずる女性職員。そこに戦自隊員が現れ、無防備な非戦闘員に容赦なく銃弾を浴びせる。通路には無数のNERV職員の遺体が転がる。戦自隊員は通路にある配電版を開け、銃で破壊していく。悲鳴が上がる部屋へ火炎放射を実行する戦自隊員。NERV本部内は修羅場と化し、戦自隊員は破壊行為を続けながら内部へと侵攻して行く。

「第3層Bブロックに侵入者!防御できません!」
 オペレーターからの報告が飛び交う。
「Fブロック側です。メインバイパスを挟撃されました!」
 シゲルがミサトに状況を報告する。
「第3層まで破棄します。戦闘員は下がって。803区間までの全通路とパイプにベークライトを注入!」
 拳を握り締めたミサトは、最期まで諦めずに抵抗を試みる。
「はい!」
 シゲルがミサトの指示を迅速に捌いていく。
 ベークライトがその赤い液体で空間を塞いでいく。階段に横たわった血まみれのNERV職員の遺体を飲み込む。
『第703管区、ベークライト注入を開始。完了まで後30。第730管区、ベークライト注入を開始。完了まで後20』
「これで少しは持つでしょう」
 一旦仕切り直しを図りたいミサトだったが、マコトの報告がそれをさせない。
「葛城三佐!ルート47が寸断されグループ3が足止めを食ってます。このままではシンジ君が!」

 シンジは、階段の下で一人膝を抱えて座っていた。
「非戦闘スタッフの白兵戦闘は極力避けて」
 ミサトは銃を手にしてマガジンの残弾を確認すると、次の行動に備える。
「向こうはプロよ。ドグマまで後退不可能なら投降した方がいいわ」
 そう言ってミサトはマコトの耳元に近づく。
「ごめん、後よろしく」
「はい!」

 外部からの攻撃の手も緩めようとしない戦略自衛隊。戦自隊の司令官は、第3新東京市を見下ろす山から望遠鏡で戦況を確認する。
「意外と手間取るな」
「我々に楽な仕事はありませんよ」

 マコトは引き出しを開けて拳銃を取り出すと、これから始まる戦いに備える。
「分が悪いよ。本格的な対人要撃システムは用意されてないからな。ここ」
「ま、せいぜいテロ止まりだ」
 そう言って、シゲルはサブマシンガンを取り出す。
「戦自が本気を出したらここの施設なんてひとたまりもないさ」
 銃を構えながらマコトが言う。
「今考えれば、侵入者要撃の予算縮小って、これを見越してのことだったのかな」
 シゲルは隠してある武器を探りながら、思い出したように言う。
「あり得る話だ……」
 マコトがそう答えた瞬間、第2発令所内で大きな爆発が起こる。
「うわっ」
 マコトがおもわず声を上げる。
 爆弾で開けた壁の穴から、盾を持った戦自隊がマシンガンを乱射して突入する。マコトのところにもすぐさま銃弾が飛び込んでくる。恐怖でコンソールの下に隠れるマヤに、シゲルが近づいて拳銃を渡す。
「ロック外して」
「私……私鉄砲なんて撃てません」
 マヤは渡された銃を見つめて怖気づく。
「訓練で、何度もやってるだろ!」
 シゲルは戦おうとしないマヤを説得しようとする。
「でもその時は人なんていなかったんですよ!」
 必死に抵抗するマヤの頭の近くを銃弾が掠める。
「バカ!!撃たなきゃ死ぬぞ!」
 シゲルは真剣な目でマヤに檄を飛ばす。


 THE END OF
 EVANGELION

 EPISODE:25'
 Love is destruceive